はまな調息堂

はまな調息堂ウェブログ:日々の堂主

調息整体指導室/はまな調息堂の堂主が、
からだを整えるということや日々の活動について
考えたことを綴ります

2016年02月25日:

大阪市でも阿倍野区は高齢者が多く、松崎町界隈も高齢者世帯が多くある。 わが堂も区役所の前という立地からそういった高齢者の方をよくお見かけする。

ただそういった方はまだ区役所に用事で来られるぐらいは歩けるだけに余裕を持って見ていられるのだけど、実は超高齢化社会のこの日本には普段、表に出てこないだけで要介護で寝たきりの方が、

寝たきり高齢者への医療保険を使った訪問マッサージと機能訓練

を専門にする業者がいくつも出来るぐらいにはいる。

かくいうぼくも開業前の10年近くを寝たきり高齢者さんへの訪問マッサージと機能訓練の世界で生きてきたし、今でも開業前に所属していた治療院(=ヘルスケア治療院)でバイトとして週の半分以上を京阪神地域をバイクで周りながら過ごしている。

受け持っている患者さんは脳梗塞、脳溢血の後遺症による片麻痺(=体半分が動かない)、パーキンソン氏病(または症候群)、の方がほとんどで、後は頚椎損傷や骨折などで生活機能が低下した方々が数人。

そしてその内の半分ぐらいの方が認知機能の低下したいわゆる、「認知症」の患者さんになっている。

この訪問マッサージで使う技術じたいは実はそんなに難しくはない。
筋肉量も低下し様々な機能が衰えている患者さんに下手に複雑なことをしても、怪我をさせてしまったり体力の消耗を招いて逆効果になってしまうので、あえてシンプルな技術を用いているからだ。(実費施術もされていたバイト先の尊敬する大ベテランの先生は、「うちの業務は技術だけなら目つぶって片手でできる」が口癖になっている。)

この分野で一番難しいのは、手技の技術以上に
患者さんにこちらの施術意図をどう伝え理解してもらい、積極的になってもらうか??」 である。

意思の疎通が図れる患者さんならば比較的簡単で、納得してもらうよう説明し納得していただいたら、後は粛々と施術の回数を重ねて寝たきり状態からの脱出を目指せばいい。
難しいのは担当の半分ぐらいを占める認知症を伴った患者さんの施術だ。

そのまま始めようとすると何をしに来たのかを理解されていないので、簡単に拒否が入り訪問しても施術ができずスゴスゴと撤退することになったり、できたとしてもこちらの指示が全く伝わらずやらなければならない事の半分も出来ずに帰らなければならなくなったりする。

だが、上手いと言われる先生は他の施術者が拒否をくらって撤退した患者さんを楽々と施術し、患者さんの笑顔を引き出し結果をだす

ここに「腕の差」が現れる。
ここが工夫のしどころなのである

ぼくもこの分野に飛び込んでから、上手い先生の施術を参考にしたり、思いつく限りで許される範囲のあらゆる方法を試してきた。
そんな中、4~5年ぐらい前にあるコツを思いつき、それを元に研究し失敗も重ねて自分なりのノウハウができてきたので、ここ1年ほどは他の施術者では対応できない患者さんを診ることが徐々にではあるが出来てもきている。

そのコツは余りにシンプルなので新人の先生の研修をしてもその工夫を誰も気がついてくれず、訪問先の施設のスタッフさんに説明しても「???」な顔をされてしまう。
バイト先のぼくより腕のある先生方はもちろん皆さん心得ていて、「野中先生、それでええんやで~」と笑ってくださるのだけど、なんで伝わらないかなぁ~??と不思議に思っていた

つい先日、整体の勉強会の後、師匠と呑んだ帰り、気分よく酔っぱらった勢いで、お金もないのに介護関係のある技術書を探したくなり、思いついて阪急梅田の紀伊国屋本店に立ち寄った。
お目当ての技術書はなかったのだけど、別の技術書を数冊見つけてしまい寂しい懐と相談して どれを買おうか悩んでいたところ、視界の隅に

ユマニチュード入門

の文字が飛び込んできた。
以前、同業の友人から紹介してもらいながらまだ読んでいなかった書籍だ。

どんなことが書かれているんだろう??と手に取り流し読みをしようと数ページめくったところで、すごく驚いてしまった。
なにせ認知症患者さんに対してぼくがつかんだコツとそこから積み上げてきたノウハウがそっくりそのまま洗練された形で載っていたのだから!!
まさしく、目玉どこーレベルでの

えええええええつ!!!

である。

2年ほど前にNHKで紹介されて有名になりとてもシンプルで簡単な技術であるのだけど、介護の現場ではほとんど取り入れられていない。(ぼくの知っている範囲では。)

この「ユマニチュード入門」に載っているのは初歩の技術だが、その初歩の技術だけでも認知症患者さんへのケアが一気に変わる。介護職の方にとっては恐らく生きている世界そのものが変わる
それぐらい凄い技術なのだ。

介護関係に従事する方はぜひ一度読んで見て欲しい。